手の三陰経を図で解説|経絡の走行・経穴・骨度(腋窩横紋前端〜手関節横紋)
国家試験対策や臨床の場で「手の三陰経の走行や経穴を確認したい」というときに、教科書だけだと位置関係がつかみにくいことはありませんか。
この記事では、手の三陰経(手の太陰肺経・手の厥陰心包経・手の少陰心経)について、経絡の走行・経穴の位置・骨度(腋窩横紋前端〜手関節掌側横紋)を図と表で整理しました。
さらに、経絡経穴を「知っている」だけでは終わらせない、現場で指を痛めないための実技についても触れています。
12経絡の全体像をおさらい(4経絡が3周する仕組み)
4経絡で体全身を周り、それを3回まわっているのが12経絡。体には12対の経絡が流れています。その経絡は、以下の4種類に分かれます。
手の3陰経、手の3陽経 / 足の3陽経、足の3陰経
またこの4種類の経絡それぞれ1経絡ずつが連なって体全身を回ります。そしてそれを3回くりかえすのです。つまり、手の陰経→手の陽経→足の陽経→足の陰経で一回周り、また手の陰経→手の陽経→足の陽経→足の陰経で2回目、次に3回目と回っていくのです。
次に、この4種類の経絡には、流れの向きと経絡が始まる所と終わるが決まっています。
- 手の陰経は 胸→手先
- 手の陽経は 手先→顔
- 足の陽経は 顔→足先
- 足の陰経は 足先→胸
この順で回るというようになります。4の後、胸に帰れば、また「1.手の陰経:胸→手先」にいくわけですね。
例えば、「1.手の太陰肺経→2.手の陽明大腸経→3.足の陽明胃経→4.足の太陰脾経絡」と、4本の経絡で体全身を1周回っているのが、後は他のそれぞれの4経絡が2周回る事で、12経絡が体全身を3周回る事になります。この流れを知る事で、次の経絡の大体の走行と向きが理解できてきますね。
手の三陰経とは?向き・走行を図でチェック
では今回の本題、手の6経絡【上腕・前腕、手】について話していきましょう。上記でお話した通り、経絡の流れは次のとおりです。
- 手の3陰経は 胸→手先
- 手の3陽経は 手先→顔
- 足の3陽経は 顔→足先
- 足の3陰経は 足先→胸
この4経絡で体を一周、それを3回回って12経絡になるわけですから、手の6経絡の流れは、「①手の3陰経は胸→手先」「②手の3陽経は手先→顔」になりますね。手の太陰肺経ならば、胸から始まり手先に終わるわけです。上腕・前腕・手先に置き換えればこうです。
上腕→肘→前腕→手首→手指が手の3陰経
手指→手首→前腕→肘→上腕が手の3陽経
手の三陰経は、手の太陰肺経(写真では赤)、手の少陰心経(写真では青)、手の厥陰心包経(写真では緑)、どれも足先から胸へ向かうのがわかりますね。ここでは手先から上腕までが確認できます。
手の三陰経の経穴一覧【手の経絡】
経絡経穴の覚え方として、手の3陰経の経穴を全部あげ、部位ごとに並べるとこんな感じです。手の3陰経は胸から手先にいきます。経路は3陰経それぞれが図のように並走するので、胸→脇(腋窩横紋)→上腕→肘→前腕→手関節→手指 を必ず通る事になります。計29穴しかありません。
| 手の三陰経(胸→手先) | 手の太陰肺経 | 手の厥陰心包経 | 手の少陰心経 |
|---|---|---|---|
| 胸 | ①中府穴・②雲門穴 | ①天池穴 | ①極泉穴 |
| 腋窩横紋前端 | ―(経穴はない) | ― | ― |
| 上腕 | ③天府穴・④侠白穴 | ②天泉穴 | ②青霊穴 |
| 肘関節(肘関節横紋) | ⑤尺沢穴 | ③曲沢穴 | ③少海穴 |
| 前腕 | ⑥孔最穴・⑦列欠穴・⑧経渠穴 | ④郄門穴・⑤間使穴・⑥内関穴 | ④霊道穴・⑤通里穴・⑥陰郄穴 |
| 手関節(手関節掌側横紋) | ⑨太淵穴 | ⑦大陵穴 | ⑦神門穴 |
| 手指 | ⑩魚際穴・⑪少商穴 | ⑧労宮穴・⑨中衝穴 | ⑧少府穴・⑨少衝穴 |
この3経絡、経穴の数が少ないから(29穴)、最初から音読で覚えるのは効果的です。しかし他の手の3陽経・足の6経絡は数が多いから工夫が必要になります。
もう一度全体像の3経絡の走行を見ると、外側(橈側)が肺経、真ん中が心包経、内側(尺側)が心経とまっすぐ並走しているのがわかりますね。
手の三陰経の骨度(腋窩横紋前端〜手関節掌側横紋)
手の3陰経の骨度で大切なのは、腋窩横紋前端〜肘関節が9寸、肘関節〜手関節掌側横紋が1尺2寸となる点です。
- 肺経は腋窩横紋前端〜肘関節(尺沢穴)まで9寸。肘関節(尺沢穴)〜手関節掌側横紋(太淵穴)までを1尺2寸として図ります。
- 心包経は腋窩横紋前端〜肘関節(曲沢穴)まで9寸。肘関節(曲沢穴)〜手関節掌側横紋(大陵穴)までを1尺2寸として図ります。
- 心経は腋窩横紋前端〜肘関節(少海穴)まで9寸。肘関節(少海穴)〜手関節掌側横紋(神門穴)までを1尺2寸として図ります。
上腕二頭筋と手の三陰経の関係(触診のポイント)
骨度もわかったところで、今度は上肢の筋肉との関わりあいです。手の3陰経が上腕を通る時に、一番関わるのが上腕二頭筋です。手の三陰経絡は上腕二頭筋に沿って走行しているからです。
上腕二頭筋は肩甲骨の2か所からそれぞれ長頭(関節上結節より起始)・短頭(烏口突起から起始)に分かれて起こり、肩関節を跨ぎ上腕上部で2つの頭がくっつき、上腕二頭筋の筋腹となり、肘関節を跨いで橈骨に終わります。
(掌を上に開けて腕を開けた姿勢で)上腕の内側に3陰経が通っています。上腕の内側の一番外側を手の太陰肺経、真ん中が手の厥陰心包経、一番内側が手の少陰心経と並びます。この3経絡の線状がちょうど上腕二頭筋が重なる事になります。
- 上腕二頭筋の外側縁……手の太陰肺経
- 上腕二頭筋の筋溝(長頭と短頭の間)……手の厥陰心包経
- 上腕二頭筋の内側縁……手の少陰心経
肘にある手の三陰経の経穴(尺沢穴・曲沢穴・少海穴)
上腕のこの経穴部位を探るためには、必ず肘にある3経絡の経穴が必要になります。肘にある3陰経の経穴は、手の太陰肺経は尺沢穴・手の厥陰心包経は曲沢穴・手の少陰心経は少海穴になり、3つとも肘窩横紋上と同じ高さにあります(尺沢穴と曲沢穴は肘窩横紋上)。これをまず覚えましょう。
キーワード1:上腕二頭筋腱に関わるのは尺沢穴と曲沢穴
上腕二頭筋は肩甲骨から長頭・短頭と起始し、上腕で2頭は重なり二頭筋の筋腹になり、腱となって肘関節を跨ぎ橈骨に終わります。この肘関節(肘窩の上)を上腕二頭筋腱が跨ぐその両側の凹みが尺沢穴(外側の凹み)・曲沢穴(内側の凹み)になります。
経穴部位は、手の太陰肺経の尺沢穴は肘窩横紋上で上腕二頭筋腱の外方陥凹部、手の厥陰心包経の曲沢穴は肘窩横紋上で上腕二頭筋腱の内方陥凹部にあるわけです。
キーワード2:上腕骨内側上顆に関わる経穴は少海穴
肘窩横紋をそのまま内側になぞると骨にぶつかります。これが上腕骨内側上顆です。この骨の輪郭をしっかり確認し、この上腕骨内側上顆の前縁が少海穴になります。経穴部位は、手の少陰心経の少海穴は肘窩横紋と同じ高さで上腕骨内側上顆の前縁になります。
- 手の太陰肺経の尺沢穴は肘窩横紋上で上腕二頭筋腱の外方陥凹部
- 手の厥陰心包経の曲沢穴は肘窩横紋上で上腕二頭筋腱の内方陥凹部
- 手の少陰心経の少海穴は肘窩横紋と同じ高さで上腕骨内側上顆の前縁
上腕にある手の三陰経の経穴と骨度(天府穴・侠白穴・天泉穴・青霊穴)
肘の3経絡の経穴がわかったところで、上腕にある三陰経の経穴を探っていきましょう。
- 上腕にある手の太陰肺経の経穴―天府穴・侠白穴―上腕二頭筋の外側縁
- 上腕にある手の厥陰心包経の経穴―天泉穴―上腕二頭筋の長頭と短頭の間
- 上腕にある手の少陰心経の経穴―青霊穴―上腕二頭筋の内側縁
| 上腕・肘の部位(骨度) | 手の太陰肺経 | 手の厥陰心包経 | 手の少陰心経 |
|---|---|---|---|
| 腋窩横紋前端 | ― | ― | ― |
| 下2寸・上7寸 | ― | 天泉穴(上腕二頭筋長頭と短頭の間) | ― |
| 下3寸・上6寸 | 天府穴(上腕二頭筋外側縁) | ― | ― |
| 下4寸・上5寸 | 侠白穴(上腕二頭筋外側縁) | ― | ― |
| 下6寸・上3寸 | ― | ― | 青霊穴(上腕二頭筋内側縁) |
| 肘窩横紋(肘関節と同じ高さ) | 尺沢穴(上腕二頭筋腱外方陥凹部) | 曲沢穴(上腕二頭筋腱内方陥凹部) | 少海穴(上腕骨内側上顆前縁陥凹部) |
天府穴・侠白穴は、腋窩横紋前端から尺沢穴に向かう線上で、上腕二頭筋外側縁にあります。天泉穴は腋窩横紋前端から曲沢穴に向かう線上で、上腕二頭筋の長頭と短頭の間、腋窩横紋前端から下2寸にあります。青霊穴は上腕二頭筋の内側縁で、少海穴の上3寸にあります。
上腕・肘の経穴部位はこんな感じになります。これで上腕の手の三陰経はいけますね。
手の三陽経との違いは?
手の三陰経が「胸→手先」に向かうのに対し、手の三陽経(手の陽明大腸経・手の太陽小腸経・手の少陽三焦経)は「手先→顔」に向かって走行します。向きが逆になるだけで、体を一周する4経絡の流れの一部という考え方は同じです。手の三陽経の経穴を詳しく知りたい方は、続編の記事もあわせてご覧ください。
経絡・経穴は「図で覚える」だけでは現場で通用しない
ここまで手の三陰経の走行・経穴・骨度を図と表で確認してきました。国家試験対策としてはこれで十分ですが、実際の臨床に出るとそう単純にはいきません。
鍼灸師を目指して専門学校で経絡経穴を学んでも、いざ就職してみると個人開業の鍼灸院はごくわずかで、多くの場合は鍼灸整骨院への就職になります。そしてそこで求められるのは、鍼治療ではなく指圧・マッサージということが少なくありません。
経絡の走行や経穴の位置は正確に暗記していても、それを実際の体に当てはめて圧をかける技術は、学校では教わっていない方がほとんどです。その結果、我流でマッサージを行い、親指を痛めたり腰を痛めたりしてしまう鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師が後を絶ちません。
坂本指圧マッサージ塾では、こうした「学校では教わらない、指を痛めない指圧マッサージの技術」を、経絡経穴の知識を土台にしながらお伝えしています。
- 経穴の位置を正確に押さえる指の使い方
- 指を痛めずに圧をかけ続けるための姿勢・体の使い方
- 現場で「マッサージをして」と言われたときに困らない実技力
これから就職を控えている専門学校生の方も、すでに現場で指や腰の痛みに悩んでいる方も、まずは無料ガイダンスで塾の雰囲気や指導内容を確認してみてください。
まとめ
手の三陰経は「胸→手先」に向かい、手の太陰肺経・手の厥陰心包経・手の少陰心経の3経絡が上腕二頭筋に沿って並走しています。腋窩横紋前端〜肘関節が9寸、肘関節〜手関節掌側横紋が1尺2寸という骨度を押さえておけば、経穴の位置も迷わず追えるようになります。図と表で走行・経穴・骨度を押さえたら、あとは実際に自分の腕や人の体で触れて確認する練習を重ねていきましょう。
